三島森田病院

静岡県三島市徳倉1195-793


クリックで詳細を表示します
クリックで詳細を表示します

副院長

   富士山に魅せられて
                                   (愛犬)マルコのママ

 4月1日に入職しました。出勤第一日目には新しい元号が発表されるという歴史的瞬間があり、まさに転機を感じるエピソードでした。
 私自身は浜松医大の精神医学教室で学んだ経験を生かして東京で急性期の精神科医療に携わった後、救急医療そして司法精神医療へと進みましたが、同時に自分の経験を若手医師に伝えて教育していくことを、何か使命のように感じて指導にもあたってきました。そんな中で指導医として三島森田病院の理事長である森田正哉先生に出会ったわけですが、彼を通して初めて森田療法が、生き方として私の中に深く根付いていることを自覚したのです。
 気づくきっかけとしては正哉先生が正馬先生の曾孫であるという事実のみならず、正馬先生と同様に彼の中に患者本位の治療者としての精神をはっきりと感じたことにもよるのでしょう。生きているとまさに予測しない出来事の連続で、ともすると思考は悪循環するだけで行動が滞っていきがちですが、私が10年以上東京の第一線の病院で、自分のことにとらわれていれば到底こなすことのできない、救急、急性期医療に携わり、奇跡と評価される程度に事故を回避してこられたのは「目的本位」「あるがまま」といった森田療法の本質的な教えが治療法というよりも、知らず知らずの間に私自身の中に生き方として浸透していたお陰ではないかと考えるようになりました。
 精神科においては特に、治療者の精神状態が患者様の病態に影響を与えますので自分自身を整える必要があります。特に急性期においては自殺や暴力等の事故につながることもありますので、こうした事態を回避するためにも目の前の患者様の病態に集中しなくてはなりません。森田療法の考え方は単になすべきことを行うだけではなく、「あるがままに事態を受け入れる」ことが前提での行動本位であると私は理解しています。不適応を来して入院される患者様は本来のなすべきことができなくなる程度に、例えば確認行為に没頭している状態です。絶対臥褥期には、このいわば回避的な行動を停止させるわけですから、本来すべきことから逃げるための症状であった場合には、事態をあるがままに受け入れることにつながる、まさに「恐怖突入」ということになります。とかく、何事も逃げれば逃げるだけ苦悩は増していくものであると実感しています。ですので、「恐怖突入」することは問題解決の近道だと思います。もちろん、解決できない、大きすぎる問題もあるでしょうから、逃げることも時には生きていくためには必要となるでしょう。また、回避行動というより、例えば「眠れない」ことにとらわれて行動が停止している患者様もいらっしゃいます。

 神経症による不適応でなくとも、日々生活している中で遭遇する問題には優先順位を見失わせる力があります。私自身は直面している個人的な問題から逃げるのではなく、受け入れながら、しかしなすべきことに集中していくことを心掛けてきましたが、もしかしたら、これは森田療法の本質的な考え方ではないのかとはっとさせられたのです。そして、これまで安全に医療に携わってこられたのは、浜松医大時代に毎日マインドコントロールのように森田療法を教えこまれたことで知らず知らずのうちにこの考え方が自分の中に浸透していたお陰ではないかと考えるようになりました。
 私自身は森田療法の専門家でもなんでもありませんので、自己流の勝手な解釈かもしれません。ですが以後、私は森田正馬先生への恩返しのつもりで正哉先生の指導にあたってきました。そして彼にそんな私の気持ちが通じたことが今回のこちらの病院への就職につながったのだと感じ感謝しています。
 冒頭で申し上げましたとおり浜松医大時代に森田療法をはじめとして思春期や老年期精神医療、芸術療法等様々な領域の精神科医療を学んだことが、東京における急性期、救急医療、そして司法精神医療の土台となったように思います。今後は東京でのこうした経験を三島における地域医療につなげていけたらと考えています。
 東京から三島へと転居した初日に三島駅で見た富士山はまさに世界遺産といえる堂々とした美しさ、神々しさを放っており、引っ越しで数日間、睡眠時間がほとんどない状況で疲弊していましたが、私のこうした思いの後ろ盾になってくれているかのように感じ、強められたのを覚えています。現在も毎日、早朝、犬の散歩に行くときに、まず富士山が目に飛び込んでくるのですが、そこで思いを新たにすることができ、人間のはかなさ、卑小さを感じるとともに「謙虚さ」の大事さに気づかされています。謙遜に、しかし向上心を忘れずに、この地で、この病院で働けることに感謝している今日この頃です。
.